はじめに
本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
売れるネット広告社グループの基礎情報
今回ご紹介するのは、インターネット広告とD2C(Direct to Consumer)支援事業を展開する売れるネット広告社グループ(東証グロース 9235)です。同社は、D2Cビジネスに特化したSaaS型ECカートシステム「売れるD2Cつくーる」を提供しており、商品の企画から広告運用、顧客対応まで、D2C事業の成功に必要なノウハウを一気通貫でサポートしています。
特に、長年の経験で培った「売れるノウハウ」をシステムに詰め込み、広告効果の最大化とLTV(顧客生涯価値)向上に貢献することを目指しているのが特徴です。D2C市場が拡大を続ける中で、その成長を支える重要なインフラとしての役割を担っていると言えるでしょう。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。
- 最低投資金額 : 111,500円(1,115円/株)
- PBR : 12.50倍
- PER : 4,288.46倍
- 配当利回り : 0.00%
- 株主優待 : なし
(2025年10月17日(金)時点)
ぽんぽん的な評価
△ ぽんぽんは、あまり魅力は感じないぽん。。現状の株価指標はかなり割高感があるぽん〜。もう少し様子を見たいぽん!
評価の理由
[評価の注目ポイント] D2C市場の成長性と独自のノウハウは魅力的ですが、現在の株価は先行期待が大きく織り込まれ、割高感が否めません。収益性改善が今後の鍵となるでしょう。
A. 成長性 : △
売れるネット広告社グループが事業を展開するD2C市場は、今後も成長が期待される分野です。同社のSaaS型ECカートシステム「売れるD2Cつくーる」は、D2C事業者が直面する広告効果の最適化やLTV向上といった課題に対し、独自の「売れるノウハウ」をシステムに組み込むことで差別化を図っています。これは、D2C事業者が成功するための強力なツールとなり得るでしょう。
しかし、過去数年の売上や利益の推移を見ると、成長の勢いには波があり、安定した高成長を継続できているとは言い難い状況です。特に、ROE(自己資本利益率)が-64.82%と大きくマイナスである点は、現時点での収益性に課題があることを示しています。高い成長期待が株価に織り込まれている一方で、その期待に見合う収益を安定して生み出すには、まだ時間がかかるかもしれません。年初来高値2,015円、安値348円という株価の大きな変動も、市場が同社の成長性に対して期待と不安を抱いていることの表れだと考えられます。
B. 割安性 : ×
同社の割安性については、現在の指標を見る限り、非常に高い割高感が否めません。PER(株価収益率)は4,288.46倍、PBR(株価純資産倍率)は12.50倍と、いずれも市場平均を大きく上回る水準です。これは、将来の大きな成長を市場が強く期待していることを示唆していますが、現状の収益力から見ると、株価は先行しすぎている可能性も考えられます。
また、配当利回りは0.00%であり、現状では株主への還元は行われていません。株主優待も設定されていないため、インカムゲインを重視する投資家にとっては魅力に欠けるかもしれません。D2C市場の将来性や同社のビジネスモデルに魅力を感じるとしても、現在の株価水準で投資するには、相当な成長が実現されるという確信が必要となるでしょう。
C. 安全性 : △
財務の安全性については、自己資本比率が35.5%と、一定の健全性は保たれていると言えます。しかし、前述の通りROEが-64.82%と大幅な赤字を計上しており、EPS(1株当たり利益)も0.26円と極めて低い水準にとどまっています。これは、企業が事業活動を通じて効率的に利益を生み出せていないことを示しており、長期的な財務健全性への懸念材料となり得ます。
信用買残が771,900株と発行済株式数に対して比較的多いため、短期的な需給バランスにも注意が必要です。今後の事業展開や収益改善の状況によっては、財務状況が大きく変動する可能性も考えられます。D2C市場という成長分野に身を置く企業として、積極的な投資は理解できますが、収益性が伴わない状況が続けば、財務面での安定性も揺らぎかねません。
D2C広告市場の進化と売れるネット広告社グループの役割
D2Cビジネスの成功には、優れた商品だけでなく、いかに効率的に顧客を獲得し、LTVを高めるかが重要です。その中で、広告戦略は極めて重要な要素となります。インターネット広告の世界は常に進化しており、特にAIを活用したパフォーマンス広告の最適化は、D2C事業者にとって避けて通れないテーマとなっています。
例えば、海外ではTaboolaのようなネイティブ広告プラットフォームが、パブリッシャーとの連携を強化し、AIを駆使したパフォーマンス広告の提供を拡大しています。MediaPostの記事「Taboola Builds On Publishing Partnerships To Deliver Inventory To Performance Advertisers – MediaPost」によれば、Taboolaは「Realize」プラットフォームを通じて、ディスプレイ広告や自社のパブリッシャーネットワーク、アプリ、OEMへの広告配信を可能にし、その中心にはAIパフォーマンスエンジンが据えられています。このプラットフォームは、パブリッシャーとのコードオンページ統合により、広告配置に利用できる強力なシグナルを提供し、広告主はより効果的なターゲティングと成果を期待できるようになっています。
売れるネット広告社グループが提供する「売れるD2Cつくーる」は、まさにD2C事業者がこのような最新の広告トレンドに対応し、「売れる」を実現するためのソリューションとして位置付けられます。D2Cビジネスでは、顧客の反応をダイレクトに得られるため、広告のPDCAサイクルを高速で回し、効果を最大化することが不可欠です。TaboolaのようなプラットフォームがAIを活用して広告のパフォーマンスを向上させているように、売れるネット広告社グループも、自社の持つ「売れるノウハウ」と最新のテクノロジーを組み合わせることで、D2C事業者の広告効果をさらに高めることができるでしょう。
D2Cの広告戦略においては、単に広告を配信するだけでなく、どの媒体で、どのようなクリエイティブを、どのターゲットに、いつ配信するかといった、多岐にわたる要素を最適化する必要があります。売れるネット広告社グループは、長年の経験から得た知見と、SaaSという形で提供するシステムを通じて、これらの複雑な広告運用を効率化し、D2C事業者が本業に集中できる環境を提供しています。AIによる広告最適化が加速する中で、同社がどのようにその技術を取り入れ、D2C事業者に新たな価値を提供していくのかが注目されます。
SaaSを活用したビジネス支援という点では、他の企業も様々な分野で活躍しています。例えば、クラウド型業務システムを提供する◯(4058)トヨクモのように、特定の業務に特化したSaaSはDX推進の大きな力となっています。売れるネット広告社グループも、D2Cというニッチながら成長性の高い市場で、SaaSの強みを最大限に活かしていると言えるでしょう。


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