(3529)アツギ:PBR3.82倍・PER55.37倍と無配、事業構造改革の行方

銘柄紹介

はじめに

本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。

今回ご紹介するのは、ストッキングやインナーウェアでおなじみのアツギ(ATSUGI)です。長年、日本の女性たちの足元や肌を支えてきた老舗ブランドとして、多くの方に親しまれてきました。しかし、近年は国内市場の縮小や消費者のライフスタイルの変化、カジュアル化の進展など、業界全体が大きな転換期を迎えています。そんな中で、アツギがどのような戦略を描き、未来へと向かっているのか、一緒に見ていきましょう。

銘柄の基礎情報

アツギは、レッグウェア(ストッキング、タイツ、ソックスなど)やインナーウェアの企画、製造、販売を手掛ける企業です。特にストッキングにおいては、国内トップクラスのシェアを誇り、高いブランド認知度を持っています。しかし、国内市場の成熟化やファストファッションの台頭など、厳しい競争環境に置かれています。

直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。

  • 最低投資金額 : 256,200円(2,562円/株)
  • PBR : 3.82倍
  • PER : 55.37倍
  • 配当利回り : 0.00%
  • 株主優待 : なし
  • (2025年9月29日(月)時点)

ぽんぽん的な評価

ぽんぽんは、売りたいぽん!もう少し事業構造改革の成果が明確になり、安定的な収益と配当が再開されたら、改めて検討したいぽん〜!

評価の理由

[評価の注目ポイント]: 高いPERとPBR、そして無配当という現状は、投資家にとって厳しいぽん。事業構造改革の行方と、その先に見える具体的な成長戦略に注目したいぽん!

A. 成長性 : △

アツギは、国内市場の縮小や消費者のライフスタイル変化に対応するため、長年にわたり事業構造改革を推進しています。不採算事業からの撤退や生産体制の見直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化など、様々な取り組みを進めてきました。2024年3月期には黒字転換を果たし、会社予想EPSもプラスとなっていますが、これは構造改革によるコスト削減効果や、一時的な需要回復によるものも含まれる可能性があります。本格的な成長軌道への回帰には、新しい収益源の確立やブランド価値の再構築が不可欠でしょう。現状では配当も停止しており、株主への利益還元という点でも成長の恩恵を感じにくい状況です。製造業が変革期にある中で、アツギもまた新たなビジネスモデルや製品開発で変革を迫られています。他の製造業の変革事例として、トヨタ自動車の電動化戦略と品質問題、変革期に問われる真価なども参考になるかもしれません。

B. 割安性 : ×

現在の指標を見ると、PERは55.37倍、PBRは3.82倍と、同業他社と比較しても高水準にあります。一般的に、PERが高いのは将来の成長期待が株価に織り込まれていることを示しますが、アツギの場合、現在の収益水準から見ると割高感が否めません。配当利回りが0.00%であることも、割安性を評価する上ではマイナス要因です。将来への期待が先行している可能性もありますが、それが具体的な収益改善や株主還元に結びつくまでは、慎重な姿勢が求められるでしょう。PERの高さという点では、SaaS企業であるユーザベースのSaaSとメディア融合が生む成長性とPER70倍の評価のような銘柄とは、その背景にある期待の性質が大きく異なることを理解しておく必要があります。

C. 安全性 : ○

自己資本比率は42.3%と、比較的健全な水準を維持しており、財務基盤は一定の安定性があると言えます。これは、長年の事業活動で培ってきた体力と、構造改革による無駄の排除が進んでいることの表れかもしれません。ただし、市場環境の変化が激しいアパレル業界において、この財務体力をいかに新しい成長投資や事業再編に活用していくかが、今後の安全性を見極める上で重要となるでしょう。安定した財務基盤は、新しい挑戦を可能にする重要な要素となります。

ファッションの未来とアツギの挑戦

アツギのような老舗ブランドにとって、ファッション業界のトレンドをいかに捉え、自社の製品開発やブランド戦略に活かしていくかは、常に大きな課題です。最近のファッション界では、ロンドンの新進気鋭ブランドAlettaが注目を集めています。Vogueの記事「Aletta Spring 2026 Ready-to-Wear Collection」によると、デザイナーのFreddy CoomesとMatt Empringhamは、子供の遊び道具からインスピレーションを得た、遊び心のあるデザインを展開し、ファッションに「新しい顔」をもたらしています。

Alettaのようなブランドが示すのは、既成概念にとらわれない自由な発想と、デジタルネイティブ世代が求める「楽しさ」や「個性」です。アツギが手掛けるレッグウェアやインナーウェアは、ファッションの基礎となる部分であり、こうした新しいトレンドや若いデザイナーの感性から学ぶべき点は多いはずです。伝統的な技術や品質を守りつつ、いかにして「新しいアツギ」を表現していくか。例えば、環境に配慮したサステナブル素材の導入や、AIを活用したパーソナライズされた製品提案、あるいはデジタル技術を駆使した新しい顧客体験の提供などが考えられます。アツギが、Alettaのような「遊び心」や「新しさ」を、どのように自社のブランドに取り入れ、消費者の心を掴んでいくのか。伝統と革新のバランス、そして素材開発力やマーケティング戦略の進化が、今後の成長を左右する鍵となるでしょう。

また、サステナビリティへの意識の高まりは、アパレル業界全体に共通する重要なテーマです。例えば、日本マクドナルドHDが再生農業への大規模投資と持続可能な成長戦略を発表しているように、他業種でも環境への取り組みが加速しています。アツギも、素材調達から生産、廃棄に至るまで、サプライチェーン全体での環境負荷低減や倫理的な製造プロセスを追求することで、ブランド価値を高めることができるかもしれません。これは単なるコストではなく、未来への投資として捉えるべきでしょう。

アツギは、長年の歴史の中で培ってきたブランド力と技術力を持っています。この強みを活かしつつ、変化の速い時代に合わせた柔軟な発想と挑戦を続けることができれば、再び輝きを取り戻す可能性を秘めていると言えるでしょう。今後の事業構造改革の進捗と、具体的な成長戦略の展開に注目していきたい銘柄です。

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