本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
はじめに
今回は、日本の電力供給を支える大手電力会社の一つ、東北電力(9506)についてご紹介したいと思います。特に、その割安性と高配当利回り、そして今後のエネルギー転換への取り組みに注目して見ていきましょう。
銘柄の基礎情報
東北電力は、その名の通り東北地方と新潟県を主要な供給エリアとする大手電力会社です。電気事業を核に、ガス事業や熱供給事業、さらには再生可能エネルギー事業など多角的にエネルギー関連事業を展開しています。地域社会のライフラインを支える重要な役割を担っており、安定した電力供給を通じて地域の発展に貢献しています。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。
- 最低投資金額 : 113,100円(1,131円/株)
- PBR : 0.56倍
- PER : 4.19倍
- 配当利回り : 3.54%
- 株主優待 : なし
- (2025年10月16日(木)時点)
ぽんぽん的な評価
〇 ぽんぽんは、買いたいぽん!
PBRが0.56倍と非常に割安で、配当利回りも魅力的な水準ぽん!今期の業績回復と今後のエネルギー転換への取り組みに期待したいぽん〜!
評価の理由
[評価の注目ポイント]
PBR0.56倍、PER4.19倍という圧倒的な割安感に加え、高配当利回りも魅力。安定した電力供給と脱炭素化への挑戦に期待!
A. 成長性 : 〇
電力会社は地域独占的な事業特性から、急激な売上高の成長は期待しにくいものの、安定した収益基盤を持っています。過去数年間は燃料価格の高騰によって厳しい業績が続きましたが、現在はその影響も落ち着き、大幅な利益回復が見込まれています。東北電力は、再生可能エネルギーの導入拡大(洋上風力発電など)や、女川原子力発電所の再稼働に向けた取り組みを進めており、これらが実現すれば収益構造の安定化と脱炭素化への貢献が期待できます。また、送配電網の強化やスマートグリッド技術の導入など、次世代の電力インフラ構築にも力を入れており、長期的な視点で見れば堅実な成長が期待できるでしょう。
B. 割安性 : ◎
東北電力のPBR(株価純資産倍率)は0.56倍、PER(株価収益率)は4.19倍と、非常に割安な水準にあります。これは、企業の純資産や利益に比べて株価が低く評価されていることを示しています。特にPBRが1倍を下回るということは、会社が解散して資産を清算した場合に、株主が投資した金額よりも多くの資産が戻ってくる可能性があるという考え方もできます。さらに、配当利回りも3.54%と高水準であり、インカムゲインを重視する投資家にとっても魅力的な銘柄と言えるでしょう。市場がまだ同社の回復力や将来の成長戦略を十分に織り込んでいない可能性があり、割安感が際立っています。
C. 安全性 : 〇
自己資本比率18.3%は、他の業種と比較すると低い水準に見えるかもしれませんが、電力会社のような大規模な設備投資を必要とする公共インフラ企業としては一般的な水準です。電力事業は国の規制下にあり、公共性の高い事業であるため、経営の安定性はある程度担保されています。また、ROE(自己資本利益率)が20.17%と非常に高い水準にあることは、資本を効率的に活用して利益を生み出す力が優れていることを示しています。これは、前年度の赤字から今期の大幅な黒字転換によるものであり、持続的な高ROEを維持できるかが今後の注目点です。大規模災害リスクや原子力発電所の運営リスクなどは常に存在しますが、それらを乗り越えるための体制強化にも取り組んでいます。
電力会社のジレンマ:安定供給と脱炭素化の狭間で
電力会社を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。特に、「安定供給の維持」と「脱炭素化の推進」という二つの大きな命題を同時に達成することが求められており、これは東北電力にとっても重要な経営課題です。
先日、アメリカのニュースサイト「POLITICO Pro」に掲載された記事「E&E News: NY grid operator finds multiple reliability shortfalls in next 5 years」では、ニューヨーク州の独立系電力系統運用者(NYISO)が、今後5年間の電力供給において複数の信頼性不足を指摘したと報じられました。この記事によると、ニューヨーク州は2040年までにゼロエミッショングリッドを目指すという野心的な目標を掲げている一方で、電力需要の着実な増加が見込まれており、その両立が困難になっている状況が浮き彫りになっています。
具体的には、脱炭素化のために火力発電所の廃止が進む一方で、再生可能エネルギーの導入が間に合わない、あるいはその不安定性から安定供給を脅かす可能性が指摘されています。そのため、記事では既存のガス火力発電所への継続的な依存や、老朽化したガス発電所の再稼働の可能性も示唆されています。
このニューヨークの事例は、遠い国の話として片付けられるものではありません。日本、そして東北電力も同様の課題に直面しています。日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げ、再生可能エネルギーの導入を加速させています。しかし、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは天候に左右されやすく、常に安定した電力を供給できるわけではありません。
東北電力は、このジレンマを解決するために、女川原子力発電所の再稼働を進めることで、ベースロード電源(常に安定して供給できる電源)を確保し、電力の安定供給と脱炭素化の両立を図ろうとしています。また、洋上風力発電などの大規模な再生可能エネルギー開発にも積極的に投資し、電源構成の最適化を目指しています。
さらに、電力系統全体のレジリエンス(強靭性)を高めるための送配電網の強化や、電力の需給バランスを調整する蓄電池技術の導入なども不可欠です。ニューヨークの事例が示すように、安易な脱炭素化は電力供給の信頼性を損なうリスクを伴います。東北電力が、いかにして地域の安定供給を維持しつつ、国の脱炭素目標達成に貢献していくのか、その手腕が問われることになります。この挑戦は、同社の今後の成長戦略を占う上で非常に重要なポイントとなるでしょう。
電力インフラの安定供給と脱炭素化の両立は、日本全体の課題でもあります。他のインフラ関連企業でも同様の課題に直面しているところがあります。例えば、ポンプなどの産業機械を手掛ける酉島製作所(6363)も、インフラ需要の安定成長が期待される企業の一つです。
まとめ
東北電力は、PBR0.56倍、PER4.19倍、配当利回り3.54%と、現在の株価は非常に割安感があります。燃料価格高騰からの業績回復に加え、安定供給の維持と脱炭素化への挑戦という、大きな経営課題に真摯に取り組んでいます。女川原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギー開発など、今後の動向が注目される企業です。投資を検討される際は、これらの点を踏まえ、ご自身の判断で慎重にご検討ください。


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