本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
はじめに
今回は、日本のものづくりを支える重要な産業である工作機械分野から、タケダ機械(証券コード: 6162)をご紹介します。同社は、金属加工に不可欠な工作機械の製造・販売を手がける企業として、長年にわたり日本の製造業に貢献してきました。特に、高精度な加工を可能にする機械は、自動車、航空宇宙、建設機械といった幅広い分野で活躍しています。
現在の株式市場では、PBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく下回る企業が注目される中、タケダ機械もまた、その財務の安定性と比べて株価が割安に評価されている側面が見られます。しかし、一方で直近の収益性には課題も抱えており、投資家としてはそのバランスをどう見るかがポイントとなりそうです。
この記事では、タケダ機械の基本的な情報から、現在の評価、そして今後の展望まで、アナリストの視点から深掘りしていきます。
銘柄の基礎情報
タケダ機械は、主に金属加工用工作機械の製造・販売を手掛けています。具体的には、穴あけ、切断、研削といった様々な加工に対応する機械を提供し、日本の基幹産業を縁の下で支える存在です。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。
- 最低投資金額 : 298,000円(2,980円/株)
- PBR : 0.53倍
- PER : 11.91倍
- 配当利回り : 2.68%
- 株主優待 : なし
- (2025年11月7日(金)時点)
その他の指標(2025年11月7日(金)時点):
- 前日終値 : 2,952円(11/06)
- 始値 : 2,931円(11/07)
- 高値 : 2,980円(11/07)
- 安値 : 2,930円(11/07)
- 出来高 : 900株(11/07)
- 売買代金 : 2,643千円(11/07)
- 時価総額 : 3,040百万円(11/07)
- 発行済株式数 : 1,020,000株(11/07)
- 1株配当(会社予想): 80.00円(2026/05)
- EPS(会社予想): 250.17(2026/05)
- BPS(実績): 5,590.89
- ROE(実績): 5.74%
- 自己資本比率(実績): 68.5%
- 単元株数 : 100株
- 年初来高値 : 3,680円(25/04/01)
- 年初来安値 : 2,640円(25/04/07)
- 信用買残 : 34,500株(10/31)
- 信用売残 : 0株(10/31)
ぽんぽん的な評価
〇 ぽんぽんは、買いたいぽん! 収益改善の兆しが見えてきたら、積極的に検討したいぽん!
評価の理由
[評価の注目ポイント]:割安な株価と盤石な財務基盤で安心感はあるものの、収益性の改善が今後の鍵を握るぽん。
A. 成長性 : △
直近のデータでは「成長性: 0.0倍」と評価されており、現状では成長が停滞していると見られます。純利益率がマイナスに転じ、営業利益率も低下傾向にあることから、収益面での力強さに欠ける状況です。工作機械業界全体が景気変動の影響を受けやすいこともあり、今後の需要回復とそれに向けた新たな戦略が期待されます。
B. 割安性 : ◎
PBRは0.53倍、PERは11.91倍と、非常に割安な水準にあります。特にPBRが1倍を大きく下回っている点は、企業の持つ純資産に対して株価が低く評価されていることを示しており、潜在的な価値があると考えられます。配当利回りも2.68%と魅力的で、株価が割安な水準で安定した配当を期待できるのは投資家にとってメリットと言えるでしょう。
C. 安全性 : ◎
自己資本比率は68.5%と非常に高く、財務基盤は盤石と言えます。これは、外部からの借入に依存せず、自社の資本で事業を運営できる体力があることを意味します。有利子負債は直近で増加したものの、この高い自己資本比率を考慮すれば、財務の安定性に大きな懸念はないでしょう。EPS(1株当たり利益)は変動が大きいものの、強固な財務体質は企業の持続可能性を支える重要な要素です。
タケダ機械の事業と市場環境
タケダ機械が主戦場とする工作機械業界は、「マザーマシン」とも称されるように、あらゆる製造業の根幹を支える重要な産業です。自動車、航空機、建設機械、さらには医療機器や半導体製造装置に至るまで、高精度な部品加工には工作機械が不可欠です。近年、製造業では人手不足や生産性向上のニーズから、自動化や省力化への投資が加速しており、これに伴い、より高機能でインテリジェントな工作機械の需要が高まっています。
特に、多品種少量生産や複雑形状部品の加工に対応できる多軸加工機や、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用したスマートファクトリー化を支援する機械への期待は大きいでしょう。タケダ機械も、このような市場の変化に対応し、技術革新を進めることが、今後の成長への鍵となります。
最新の技術動向とタケダ機械の展望
工作機械業界では、常に技術革新が求められています。最新のトレンドとして注目されるのが、多軸マシニングセンタの進化です。例えば、Modern Machine Shopが報じた「SW North America Multispindle Machining Centers Boost Efficiency」の記事では、SW North America社の多軸マシニングセンタ「BA W06-22」と「BA 322i」が紹介されています。これらの機械は、アルミニウムや非鉄金属製の大型軽量部品の加工に特化しており、バッテリートレー、航空宇宙構造物、農業機械部品など、高い公差精度と表面仕上げが求められる用途でその能力を発揮するとされています。
この技術は、自動車産業における電気自動車(EV)化の進展に伴う軽量化ニーズ、航空宇宙産業での高性能部品製造、医療機器分野での微細加工など、多岐にわたる産業で効率性と柔軟性を提供します。タケダ機械も、このような市場の最先端ニーズを捉え、多軸加工や複合加工、さらには自動化・省人化に対応した機械の開発・提供を強化していくことが、収益性改善と成長への道筋となるでしょう。
特に、EVシフトは自動車部品の構造や素材に大きな変化をもたらしており、新たな加工技術や機械への投資が活発化しています。タケダ機械がこの波に乗り、次世代の製造ニーズに応える製品を投入できれば、現在の成長停滞を打破する大きなチャンスとなり得ます。
投資家として注目したいポイント
タケダ機械への投資を考える際、投資家として注目すべき点はいくつかあります。
まず、PBR0.53倍、PER11.91倍という割安感と、自己資本比率68.5%という盤石な財務基盤は非常に魅力的です。これは、企業が持つ資産価値に対して株価が過小評価されている可能性を示唆しており、将来的な株価上昇の余地があると考えられます。同様にPBRが割安で財務が安定している企業としては、〇(7856)萩原工業や〇(7922)サンエー化研、〇(3161)アゼアス、〇(6973)ムロコーポレーションなども参考にできるかもしれません。
しかし、一方で直近の収益性悪化は懸念材料です。純利益率がマイナスに転じている状況は、単年度の業績だけでなく、今後の事業戦略やコスト構造の見直しが急務であることを示しています。有利子負債が直近で増加している点も、その資金使途が今後の成長投資なのか、あるいは運転資金の補填なのかによって評価が変わるでしょう。
したがって、投資家としては、以下の点に注目して動向を追うことが重要です。
- 収益性改善に向けた具体的な施策: 新製品の開発、コスト削減、販売戦略の見直しなど、企業がどのような手を打ってくるか。
- 成長分野への対応力: EV、航空宇宙、医療機器といった成長産業からの需要をどれだけ取り込めるか。特に、多軸マシニングセンタのような高付加価値製品へのシフト状況。
- 有利子負債増加の背景: 設備投資など、将来の収益に繋がる前向きな投資であればポジティブに評価できます。
まとめ
タケダ機械は、日本のものづくりを支える工作機械メーカーとして、強固な財務基盤と現在の株価の割安感という大きな魅力を持っています。しかし、直近の収益性悪化という課題も抱えており、これが株価を抑え込んでいる要因となっている可能性が高いです。
工作機械業界は、自動化や省力化、そしてEV化といった大きな潮流の中で、常に進化を続けています。タケダ機械がこの変化の波を捉え、新たな技術や製品で市場のニーズに応えることができれば、現在の割安な評価から脱却し、本来の企業価値が再評価される日が来るかもしれません。
投資を検討される際には、同社の今後の事業戦略や、収益改善に向けた具体的な取り組みに注目し、ご自身の判断で慎重に検討されることをお勧めします。


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