本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
はじめに
今回ご紹介するのは、関西圏を中心に学習塾を展開する成学社(9767)です。少子化という大きな波の中で、個別指導という強みを活かし、着実に事業を成長させてきた同社の魅力に迫ります。
銘柄の基礎情報
成学社は、主に「開成教育セミナー」「個別指導学院フリーステップ」といったブランドで、小・中・高校生向けの学習塾を運営しています。特に個別指導に強みを持っており、生徒一人ひとりの学習状況や目標に合わせたきめ細やかな指導が特徴です。また、大学受験予備校「開成教育セミナー大学受験」、幼児教育「開成ベガ」など、幅広い年代の教育ニーズに対応しています。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。
- 最低投資金額 : 78,000円(780円/株、100株単位)
- PBR : 1.27倍
- PER : 10.09倍
- 配当利回り : 2.82%
- 株主優待 : QUOカード1,000円分(100株以上保有の場合)
- (2025年10月9日(木)時点)
ぽんぽん的な評価
〇 ぽんぽんは、買いたいぽん!もう少し株価が落ち着くのを待ちたいぽん〜!
評価の理由
[評価の注目ポイント]
個別指導塾の強みと堅実な財務で安定成長、割安感と配当利回りも魅力的ぽん!
A. 成長性 : ○
成学社は、少子化という教育業界全体が直面する逆風のなかでも、個別指導に特化することで生徒数を維持・拡大してきました。個別指導は、集団授業では対応しきれない多様な学習ニーズに応えることができ、保護者からの支持も厚いのが特徴です。過去数年の売上高や利益は、コロナ禍での一時的な落ち込みはあったものの、その後は回復基調にあり、堅実な成長を見せています。配当金も安定して支払われており、株主還元にも積極的な姿勢がうかがえます。しかし、教育市場全体のパイが縮小していく中で、爆発的な成長を期待するには、新たな事業展開やデジタル教育へのさらなる対応が求められるでしょう。
B. 割安性 : ◎
現在の成学社のPER(株価収益率)は10.09倍、PBR(株価純資産倍率)は1.27倍と、教育業界の平均と比較しても比較的割安感があります。特にPERが10倍台というのは、企業の収益力に対して株価が過度に評価されていないことを示唆しています。また、配当利回りは2.82%と、現在の低金利環境下では魅力的な水準です。さらに、100株保有でQUOカード1,000円分の株主優待もあり、配当と優待を合わせた総合利回りは約4.1%となり、インカムゲインを重視する投資家にとっては非常に魅力的と言えるでしょう。
C. 安全性 : ○
成学社の自己資本比率は40.7%と、健全な財務体質を維持しています。一般的に自己資本比率が40%を超えている企業は、倒産リスクが低いとされており、外部環境の変化にも耐えうる安定した経営基盤があると言えるでしょう。教育事業は、生徒からの月謝が主な収益源となるため、比較的安定したキャッシュフローが期待できます。この堅実な財務基盤が、少子化という逆境下でも事業を継続し、株主還元を安定的に行える要因となっていると考えられます。
教育テックの興亡から学ぶ、リアル塾の未来
教育業界は、少子化という構造的な課題に加え、近年では「Ed-Tech(教育テクノロジー)」の台頭により、大きな変革期を迎えています。オンライン学習プラットフォームやAIを活用した個別最適化学習など、新たなサービスが次々と登場し、学習塾のあり方も問われています。
しかし、Ed-Tech企業が必ずしも順風満帆というわけではありません。例えば、最近の海外ニュースでは、Ed-Tech大手のAnthologyが、その事業戦略の転換を余儀なくされた事例が報じられています。
Why an Ed-Tech Behemoth Unraveled – Inside Higher Ed
この記事によると、Anthologyは、大学が包括的なソフトウェアスイート(学習管理、学生情報、顧客関係管理システムなど)をまとめて購入するという誤った推測に基づき、事業を拡大しすぎた結果、膨張したコストと競争激化、そして金利上昇による債務増大に苦しんだとされています。最終的には、資産の大部分を売却し、教育・学習プラットフォームに特化する方針に転換せざるを得なくなりました。
このEd-Tech大手の事例は、成学社のような「リアル塾」にとって、いくつかの重要な示唆を与えてくれます。
- 「全てを網羅」の落とし穴: Ed-Tech企業が包括的なソリューションを提供しようとして失敗したように、学習塾も無理に全てのデジタルサービスを取り込むのではなく、自社の強みとデジタル技術を効果的に融合させることが重要です。成学社の強みは、やはり「個別指導」というきめ細やかな対面コミュニケーションにあります。デジタル技術は、この個別指導の質を高めるためのツールとして活用すべきであり、目的化すべきではありません。
- コスト管理と競争優位性: Ed-Tech市場の競争激化は、リアル塾にとっても無縁ではありません。オンライン学習サービスは、場所や時間の制約を受けずに学習できるという点で、リアル塾とは異なる価値を提供します。成学社は、オンラインとオフラインのハイブリッド型指導を取り入れるなど、変化に対応しつつも、効率的な運営によるコスト削減や、他社にはない付加価値の提供を通じて、競争優位性を確立していく必要があります。
- 専門性への回帰: Anthologyが教育・学習プラットフォームに特化する方針転換をしたように、成学社のような個別指導塾も、「個別指導の質」という核となる専門性を磨き続けることの重要性が再認識されます。デジタルツールを活用して生徒の学習データを分析し、よりパーソナライズされた指導を提供することで、リアル塾ならではの価値をさらに高めることができるでしょう。
成学社は、長年培ってきた個別指導のノウハウと、堅実な財務基盤を活かし、Ed-Techの進化を脅威ではなく、むしろ自社のサービスを強化する機会として捉えることができれば、少子化の時代においても、さらにその存在感を高めていける可能性を秘めていると言えるでしょう。教育DXの推進は、リアル塾の競争力を高める上で不可欠な要素であり、今後の取り組みに注目が集まります。(参考:◯(7951)ヤマハ : 音の技術とブランド力、教育DXで成長期待)


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