はじめに
本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
今回ご紹介するのは、ユニットハウスやシステム建築といった仮設・建設関連事業を手掛けるナガワ(東証プライム:9663)です。私たちの身の回りにある建設現場やイベント会場、あるいは災害時の仮設住宅などで、ナガワの製品を目にされた方もいらっしゃるかもしれませんね。同社は、独自の技術とノウハウで、多様なニーズに応える空間ソリューションを提供しています。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。(2025年11月17日(月)時点)
- 最低投資金額 : 618,000円(6,180円/株)
- PBR : 1.48倍
- PER : 24.14倍
- 配当利回り : 1.62%
- 株主優待 : なし
ぽんぽん的な評価
〇 ぽんぽんは、買いたいぽん!少し様子を見て、5,800円くらいまで下がってきたら検討したいぽん〜!
評価の理由
[評価の注目ポイント]
盤石な財務基盤で安心感はあるものの、収益・成長性の伸び悩みが課題ぽん。
ナガワの事業を3つの観点から評価してみましょう。
A. 成長性 : △
ナガワの成長性は、直近ではやや伸び悩む傾向が見られます。売上高は前年同期比で緩やかな増加にとどまっており、右肩上がりの勢いは限定的です。純利益率や営業利益率も前年同期比で低下しており、収益性の面ではやや弱含んでいます。EPS(1株当たり利益)も増減を繰り返しつつ、直近では小幅な伸びにとどまるなど、力強い成長軌道を描けているとは言えない状況です。
ただし、ポジティブな点としてフリーキャッシュフローは前年同期比で増加傾向にあります。これは、本業で稼ぐ力が着実に存在し、資金を効率的に生み出せている証拠とも言えるでしょう。建設現場の省力化ニーズや、災害時の迅速な仮設対応など、ユニットハウスやシステム建築には安定的な需要が存在します。しかし、市場全体の成長鈍化や競争激化の中で、いかに新たな成長ドライバーを見つけ、収益性を向上させるかが今後の課題となりそうです。
B. 割安性 : 〇
現在のナガワの株価指標を見ると、PBR(株価純資産倍率)は1.48倍、PER(株価収益率)は24.14倍となっています。PBRは1倍を上回っており、企業の純資産に対して市場が一定の評価をしていることを示しています。PERについては、業種や市場環境にもよりますが、現状の成長性から見ると、極端な割安感があるとは言えないかもしれません。
配当利回りは1.62%(会社予想)で、特別に高い水準ではありませんが、安定した事業基盤を持つ企業としてはまずまずの水準と言えるでしょう。ナガワには株主優待制度がないため、優待による魅力は残念ながらありません。
しかし、後述する盤石な財務基盤を考慮すると、現在の株価は企業の安定性を加味した妥当な水準とも考えられます。今後の収益性改善や成長戦略の具体化によって、さらなる評価の上昇が期待できるかもしれません。
C. 安全性 : ◎
ナガワの財務健全性は非常に高く、まさに「盤石」と言えるでしょう。自己資本比率は88.4%という驚異的な水準を誇ります。一般的に望ましいとされる30%を大きく上回っており、外部からの借入に頼らず、自己資金で事業を運営できている強固な体質を示しています。これは、景気変動や予期せぬ事態が起こった際にも、企業が持ちこたえるための大きな体力があることを意味します。
ROE(自己資本利益率)は6.94%で、一般的に望ましいとされる8~10%を下回っていますが、これは自己資本比率が非常に高いために、相対的に利益率が低く見える側面もあります。高い自己資本比率は、企業の安定性や信用力を高め、長期的な視点での経営を可能にする大きな強みです。
このような強固な財務基盤は、新しい設備投資やM&Aなど、将来の成長に向けた戦略的な投資を行う上での大きなアドバンテージとなります。財務の安定性は投資家にとって何よりも安心材料となるでしょう。
ナガワの事業を深掘り!社会インフラを支える「空間ソリューション」
ナガワの事業の核は、ユニットハウスとシステム建築です。これらの製品は、単なる「仮設」に留まらない、現代社会の多様なニーズに応える「空間ソリューション」として重要な役割を担っています。
ユニットハウスは、工場で生産された箱型の建物を現場で組み立てるプレハブ工法の一種です。短期間での設置が可能で、移設や増改築も容易という特徴から、建設現場の事務所や作業員の休憩所、イベント会場の店舗、災害時の仮設住宅、あるいは学校の仮設校舎など、幅広い用途で活用されています。その迅速性と柔軟性は、現代社会のスピード感や変化の激しいニーズに非常にマッチしていると言えるでしょう。
一方、システム建築は、工場や倉庫、店舗などの大規模な建物を、標準化された部材と工法で効率的に建設する手法です。設計から施工までを一貫して管理することで、品質の安定化、工期の短縮、コストの削減を実現します。特に、近年では物流施設の需要拡大や工場再編の動きが活発であり、システム建築の効率性は企業の設備投資において魅力的な選択肢となっています。
これらの事業は、国内の建設投資動向や景気変動の影響を受けやすい側面もありますが、一方で、災害復旧やインフラ老朽化対策、イベント開催といった安定的な需要に支えられています。例えば、万が一の自然災害が発生した際には、ナガワのユニットハウスが迅速な復旧活動の拠点や被災者の生活空間として活用されるなど、社会インフラを支える重要な役割を担っています。
海外のインフラ開発から見るナガワの可能性
ナガワの事業は主に国内が中心ですが、世界的な視点で見ると、インフラ開発の需要は非常に旺盛です。例えば、2025年11月16日に報じられたニュースでは、インドのマハラシュトラ州政府が、ナーグプルに国際ビジネス金融センター(IBFC)を建設するための大規模な土地取得に3,000クローレ(日本円で約540億円)もの保証を承認したと伝えられています。(参照元:Prop News Time)
このような大規模なインフラ開発プロジェクトは、多くの建設資材や機械、そして一時的な作業拠点や事務所を必要とします。ナガワのユニットハウスやシステム建築のような効率的で柔軟な空間ソリューションは、まさにこうした海外での大規模プロジェクトにおいても、建設期間中の仮設事務所や作業員の宿舎、資材置き場、あるいは完成後の工場や倉庫といった形で活用される潜在的なニーズがあると言えるでしょう。直接的な事業展開は現状では限られていますが、グローバルな視点でのインフラ投資の活発化は、長期的にはナガワの技術や製品が持つ市場の広がりを示唆しているとも考えられます。
今後の展望と課題
ナガワは、その盤石な財務基盤を背景に、安定した事業運営を続けています。しかし、収益性や成長性の伸び悩みという課題にどう向き合うかが、今後の株価を左右する重要なポイントとなるでしょう。既存事業の深掘りとして、ユニットハウスの新たな用途開発や、システム建築の技術革新による競争力強化が考えられます。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化や、環境に配慮した製品開発なども、持続的な成長には不可欠です。
例えば、建設現場のDX化が進む中で、ユニットハウスにスマートデバイスを組み込んだり、遠隔監視システムを導入したりすることで、新たな付加価値を生み出すことも可能かもしれません。また、国内の人口減少や建設業界の人手不足といった構造的な課題に対して、省力化に貢献するシステム建築の需要は今後も堅調に推移する可能性があります。
過去には、リース事業で堅実な財務基盤を持つ企業として丸紅建材リースや、建設関連で安定した事業を営むタケダ機械といった企業もご紹介しましたが、ナガワも同様に、その安定性と社会貢献性を兼ね備えた企業と言えるでしょう。
ナガワがこの強固な財務基盤を活かし、どのようにして成長戦略を描き、収益性を向上させていくのか、今後の動向に注目していきたいですね。


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