はじめに
本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
タチエス(7239)の基礎情報
今回ご紹介するのは、タチエス(東証プライム:7239)です。タチエスは、自動車用シートの専業メーカーとして、世界中の自動車メーカーにその技術と製品を供給している企業です。単に座席を提供するだけでなく、安全性、快適性、そしてデザイン性を追求した高機能なシート開発で知られています。
自動車のシートは、乗員の安全を守る重要な保安部品であると同時に、長時間の運転や移動を快適にするための居住空間の要でもあります。タチエスは、長年培ってきた技術力とノウハウを活かし、各自動車メーカーのニーズに応じたカスタマイズ性の高い製品を提供しています。特に、近年では自動車産業の大きな変革期を迎えており、CASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)といった次世代モビリティへの対応が求められています。タチエスも、軽量化技術や電動化対応シート、自動運転時代を見据えた新しいシート機能の開発に積極的に取り組んでいます。
直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。
- 最低投資金額 : 198,100円(1,981円/株)
- PBR : (連)0.74倍
- PER : (連)8.49倍
- 配当利回り : 5.24%
- 株主優待 : なし
- (2025年10月20日(月)時点)
ぽんぽん的な評価
◎ ぽんぽんは、強く買いたいぽん!今すぐ買いたいぽん〜!
評価の理由
[評価の注目ポイント] 自動車用シート専業でPBR・PERが非常に割安、高配当で財務も盤石、CASE対応にも期待大ぽん!
A. 成長性 : 〇
タチエスの成長性は、自動車産業全体の動向に大きく左右されます。世界的な自動車生産台数の変動や、主要顧客である自動車メーカーの生産計画が直接的な影響を及ぼします。しかし、同社は単なる自動車シートのサプライヤーに留まらず、次世代モビリティへの対応を積極的に進めることで、新たな成長機会を掴もうとしています。
特に注目すべきは、自動車のCASE化への対応です。電気自動車(EV)へのシフトが進む中で、シートには軽量化が強く求められます。車体全体の軽量化は航続距離の延長に直結するため、タチエスは高強度・軽量素材の開発や構造設計の最適化に注力しています。また、自動運転技術の進化は、車内空間のあり方を根本から変える可能性を秘めています。シートは単なる座席ではなく、リラックスできる空間、あるいは移動オフィスのような多様な機能を持つようになるでしょう。タチエスは、こうした未来を見据え、乗員の快適性を高める電動リクライニング機能やマッサージ機能、さらには乗員の状態を検知するセンサー内蔵シートなどの開発を進めています。これらの高付加価値製品が、今後の収益の柱となることが期待されます。
過去数年の業績を見ると、コロナ禍による自動車生産の落ち込みから回復基調にあり、売上高や利益は堅調に推移しています。グローバルな生産体制を持つことで、地域ごとの需要変動リスクを分散し、安定的な事業運営を図っている点も強みと言えるでしょう。配当金についても、安定して高水準を維持しており、株主還元への意識の高さが伺えます。
しかし、自動車業界は常に競争が激しく、原材料価格の変動や為替リスク、そして技術革新のスピードに対応し続ける必要があります。タチエスが今後も持続的な成長を遂げるためには、CASE対応技術のさらなる深化と、グローバル市場での競争力強化が鍵となるでしょう。
B. 割安性 : ◎
タチエスの割安性は、現在の株価指標を見る限り、非常に魅力的に映ります。PBR(株価純資産倍率)は(連)0.74倍、PER(株価収益率)は(連)8.49倍と、どちらも市場平均や同業他社と比較してもかなり低い水準にあります。特にPBRが1倍を大きく下回っていることは、会社の資産価値に対して株価が過小評価されている可能性を示唆しています。
PBR1倍割れ企業は、一般的に市場から「解散価値以下」と見なされている状況であり、企業価値向上のための経営努力や株主還元策が求められるケースが多いです。タチエスは、後述する高い自己資本比率と安定した収益基盤を持ちながらPBRが1倍を割れているため、市場がその真の価値をまだ十分に評価しきれていないのかもしれません。このような企業は、経営陣がPBR改善に向けた具体的な施策を打ち出すことで、株価が大きく見直される可能性があります。
また、配当利回りは5.24%と非常に高く、現在の低金利環境下では魅力的な水準です。安定した財務基盤と収益力に裏打ちされた高配当は、長期保有を考える投資家にとって大きなインセンティブとなるでしょう。株主優待制度は設けられていませんが、この高配当だけでも十分な魅力と言えます。
これらの指標から、タチエスは現在のところ、市場から割安に放置されている「お宝銘柄」の一つと見ることができるかもしれません。もちろん、割安であることだけが投資の理由にはなりませんが、しっかりとした事業基盤と将来性が見込めるならば、投資妙味は大きいと言えるでしょう。
C. 安全性 : ◎
タチエスの財務安全性は非常に高く、安心して投資を検討できるレベルにあると言えます。自己資本比率は(連)56.0%と、製造業としては非常に健全な水準を保っています。自己資本比率が高いということは、借入金などの他人資本に頼らず、自社の資金で事業運営を行っている割合が高いことを意味し、景気変動や予期せぬ事態に対する耐性が強いことを示します。
この盤石な財務基盤は、タチエスが長年にわたり堅実な経営を続けてきた証拠でもあります。自動車部品メーカーは、設備投資や研究開発に多額の資金が必要となるため、安定した財務体質は事業継続の生命線となります。タチエスは、この点において非常に優れており、将来の成長投資や技術革新への対応にも十分な余力があると考えられます。
また、ROE(自己資本利益率)は(連)12.16%と、自己資本を効率的に活用して利益を生み出していることも示しています。PBRが1倍を割れているにもかかわらず、ROEがしっかりとした水準にあることは、企業価値向上への潜在能力が高いことを示唆していると言えるでしょう。
このように、タチエスは高い自己資本比率と健全な財務体質を背景に、安定した事業運営を継続できる強固な基盤を持っています。これは、長期的な視点で投資を考える上で、非常に重要な要素となります。過去には、自動車部品メーカーのKOAやYUSHINもPBR割安で盤石な財務基盤を持つ企業として注目しましたが、タチエスもこれらと同様に、財務の安定性に大きな強みがあると言えるでしょう。
タチエスの魅力と自動車産業の未来
タチエスの最大の魅力は、自動車用シートという一見地味に見える製品の中に、未来のモビリティ社会を支える重要な技術と可能性が詰まっている点です。
現代の自動車用シートは、もはや単なる「座るためのもの」ではありません。それは、乗員にとって最も身近な「モビリティ空間」の一部であり、安全性、快適性、そして情報伝達のハブとしての役割を担い始めています。
例えば、電気自動車(EV)へのシフトは、シートの設計に大きな影響を与えます。バッテリーの搭載位置や車体構造の変化に伴い、シートの配置や形状、さらには軽量化がこれまで以上に重要になります。タチエスは、高張力鋼板や複合材料の活用、構造設計の最適化によって、シートの軽量化を推進し、EVの航続距離延長に貢献しています。これは、EV市場の拡大とともに、タチエスの技術がより一層求められることを意味します。
また、自動運転技術の進化は、シートに新たな機能をもたらします。ドライバーが運転から解放される時間が増えることで、シートはリラックスやエンターテイメント、さらには仕事をするための空間へと変化するでしょう。タチエスは、電動リクライニングや回転機能、マッサージ機能、さらには乗員の生体情報(心拍数、呼吸など)をモニタリングするセンサーを内蔵した「スマートシート」の開発に注力しています。これにより、乗員の健康状態を把握したり、疲労を軽減したりといった、新たな付加価値を提供することが可能になります。
さらに、シェアリングエコノミーの普及もシートに新たな課題を突きつけます。不特定多数の利用者が使うことを想定し、耐久性や清掃性、そして個々の利用者に合わせたパーソナライズ機能が求められます。タチエスは、このような多様なニーズに応えるべく、素材開発からメカニズム、電子制御まで、幅広い技術領域で研究開発を進めています。
タチエスは、長年にわたり培ってきた自動車シート開発のノウハウと、主要な自動車メーカーとの強固な信頼関係を基盤としています。グローバルに展開する生産・開発体制も、世界中の自動車メーカーの多様な要求に応える上で大きな強みとなっています。これらの要素が、自動車産業の変革期において、タチエスが競争優位性を維持し、持続的な成長を遂げるための重要な原動力となるでしょう。
株主還元と投資妙味
タチエスのもう一つの大きな魅力は、その高い株主還元意識です。現在の配当利回り5.24%は、東証プライム市場の中でもトップクラスの水準であり、安定したインカムゲインを求める投資家にとって非常に魅力的です。
高配当を維持できる背景には、前述の通り、盤石な財務基盤と堅実な事業運営があります。自己資本比率が56.0%と高く、安定したキャッシュフローを生み出しているため、無理なく高水準の配当を継続できる体力があると言えます。
また、PBRが0.74倍と1倍を大きく下回っている現状は、企業価値向上の観点からも注目されます。東京証券取引所は、PBR1倍割れ企業に対して、資本効率改善や株主還元強化を強く求めています。タチエスも、今後PBR改善に向けた具体的な経営戦略やIR活動を強化していく可能性があり、それが株価の再評価に繋がることも期待できます。
もちろん、自動車産業は景気循環や技術革新の影響を受けやすい特性がありますが、タチエスはグローバルな事業展開とCASE対応への積極的な投資によって、そのリスクを分散し、新たな成長の機会を追求しています。割安な株価水準、高い配当利回り、そして未来のモビリティ社会を支える技術力という三拍子が揃ったタチエスは、長期的な視点で投資を検討する価値のある銘柄と言えるでしょう。
タチエスの今後の動向に、引き続き注目していきたいですね。


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