◎(4384)ラクスル : 既存産業DXとシェアリングエコノミー

銘柄紹介

はじめに

本ブログの記事は、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。

ラクスルの基礎情報

今回ご紹介するのは、印刷、広告、物流といった既存産業のデジタル変革(DX)を推進するプラットフォーム事業を展開しているラクスル(証券コード:4384)です。同社は、インターネットを活用して、これまで非効率だった業界の構造にメスを入れ、新たな価値を創造しています。

主な事業としては、印刷物のオンライン受発注サービス「ラクスル」、テレビCMをデータドリブンで提供する「ノバセル」、そして物流の効率化を支援する「ハコベル」の3つを柱としています。これらのサービスを通じて、中小企業から大企業まで幅広い顧客の課題解決に貢献しています。

直近の営業日における主要な指標は以下の通りです。

  • 最低投資金額 : 117,600円(1,176円/株)
  • PBR : (連)4.72倍
  • PER : (連)23.49倍
  • 配当利回り : 0.36%
  • 株主優待 : なし
  • (2025年10月3日(金)時点)

ぽんぽん的な評価

◎ ぽんぽんは、強く買いたいぽん!

既存産業のDXを牽引する成長性に期待!少し下がったところで買いたいぽん〜!

評価の理由

[評価の注目ポイント] 既存産業の非効率を解消し、デジタルプラットフォームで新たな価値を創造するラクスルの成長戦略に注目ぽん!

A. 成長性:◎

ラクスルは、印刷、広告、物流という巨大ながらも旧来の商習慣が残る市場に、インターネットとテクノロジーを導入し、DXを推進しています。これにより、これまで中小企業が抱えていたコストや手間の課題を解決し、新たな需要を掘り起こしています。特に、全国の印刷会社や運送会社の遊休資産をネットワーク化し、効率的なマッチングを実現するシェアリングエコノミーモデルは、顧客とサプライヤー双方にメリットをもたらし、持続的な成長を可能にしています。売上高や利益は着実に拡大しており、ROEも18.86%と高い水準を維持していることから、資本効率の良い成長企業であると評価できます。コロナ禍においてもDX需要の高まりを捉え、成長を継続している点は、事業の強靭さを示していると言えるでしょう。

B. 割安性:△

現在のPERは23.49倍、PBRは4.72倍と、市場平均と比較すると高めの水準にあります。これは、投資家がラクスルの将来的な高い成長を織り込んでいることの表れだと考えられます。配当利回りは0.36%と低く、株主優待も設定されていないため、短期的なインカムゲインを重視する投資家には魅力が薄いかもしれません。しかし、これは成長フェーズにある企業が、得られた利益を再投資してさらなる事業拡大を目指す姿勢の裏返しとも解釈できます。成長性を重視する投資家にとっては、現在の株価が必ずしも割高とは言い切れない側面もあります。

C. 安全性:〇

自己資本比率は32.6%と、成長企業としては比較的健全な水準を保っています。Eコマースやプラットフォーム事業は、大規模な設備投資を必要としないビジネスモデルであるため、製造業などと比較して財務リスクは抑えられやすい傾向にあります。BPS(1株当たり純資産)も着実に増加しており、企業の安定性を示す指標として評価できます。ただし、成長のための先行投資やM&Aなども視野に入れる場合、今後の財務状況には引き続き注目していく必要があるでしょう。

ラクスルのビジネスモデルを深く掘り下げる:既存産業の「非効率」を「価値」に変えるDXの力

ラクスルの最大の魅力は、そのユニークなビジネスモデルにあります。単にオンラインでサービスを提供するだけでなく、既存産業が抱える根深い「非効率」を徹底的に解消し、デジタル技術とプラットフォームの力で新たな「価値」に変えている点です。具体的に、3つの主要事業がどのようにその変革を推進しているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

「ラクスル」:印刷業界の常識を覆す

印刷業界は、多品種少量生産や短納期への対応、そして全国に点在する印刷会社の稼働率のばらつきといった課題を抱えていました。中小企業にとっては、印刷物の発注は専門知識が必要で手間がかかり、コストも不透明になりがちでした。

ラクスルは、この課題に対し、全国の印刷会社が持つ「遊休設備」をネットワーク化するという画期的なアプローチを取りました。顧客からの注文を最適な印刷会社にマッチングさせることで、印刷会社は設備の稼働率を向上させ、顧客は低コストで高品質な印刷物を手に入れられるようになりました。オンライン上でデザインテンプレートの提供、見積もり、発注までを一貫して行えるシステムは、印刷発注のプロセスを大幅に簡素化し、「印刷EC」という新しい市場を確立しました。これにより、これまで印刷物作成に二の足を踏んでいた中小企業も、手軽にプロモーション活動を行えるようになり、印刷市場全体のデジタルシフトを加速させるパイオニアとしての地位を築いています。

「ノバセル」:テレビCMを科学する

テレビCMは、その影響力の大きさから多くの企業が活用したいと考える一方で、高額な費用と効果測定の難しさから、一部の大企業に限られた広告手段というイメージがありました。特に、中小企業にとっては敷居が高いものでした。

ノバセルは、このテレビCMの常識を覆すべく、データに基づいた効果測定と費用対効果の可視化に注力しています。CM放送後のウェブサイトアクセス数や問い合わせ数などのデータを分析し、どのCMが、どの時間帯に、どれくらいの効果があったのかを明確にすることで、広告投資の最適化を支援します。これにより、これまで感覚的に行われていたテレビCMの運用を「科学」し、中小企業でもテレビCMに挑戦しやすいような価格体系やサービスを提供しています。広告業界のDXを推進し、マーケティングの民主化に貢献するその姿勢は、多くの企業の成長を後押ししています。この分野での成長戦略は、DX支援を加速させるエフ・コードのような企業とも共通する部分があるかもしれません。

「ハコベル」:物流業界の課題に挑む

物流業界は、トラックの積載率の低さ、ドライバー不足、多重下請け構造による非効率性、そして2024年問題に代表されるような労働環境の課題など、多くの問題を抱えています。荷主企業は、運送会社を探す手間やコスト、配送状況の不透明さに悩まされていました。

ハコベルは、荷主と運送会社を直接マッチングさせる物流プラットフォームを提供することで、これらの課題の解決を目指しています。荷主はスマートフォンやPCから手軽に運送を依頼でき、運送会社は空いているトラックを有効活用できるようになります。リアルタイムでの配送状況の可視化や、最適なルート提案などにより、物流コストの削減と効率的な配送を実現しています。これは、単なるマッチングサービスに留まらず、物流業界全体の構造改革に貢献し、持続可能な物流システムの構築を目指す壮大な挑戦と言えるでしょう。オンラインでのマッチングやプラットフォーム提供という点では、Eコマースの成長を支えるBASEのようなサービスとも共通のデジタル変革の精神が見られます。

3事業が生み出すシナジーと未来

ラクスルの各事業はそれぞれ独立して成長していますが、根底には「テクノロジーで既存産業の非効率を解消する」という共通のビジョンがあります。例えば、「ラクスル」で販促物を印刷する顧客が、その販促物の効果を高めるために「ノバセル」で広告を打ち、さらに商品を顧客に届けるために「ハコベル」を利用するといった、一貫したサービス提供の可能性も秘めています。このように、各事業が連携することで生まれるシナジー効果は、顧客にとっての利便性を高めるだけでなく、ラクスル自身の成長ドライバーとなるでしょう。

ラクスルは、データ活用による各事業の最適化と、そこから生まれる新たな価値創造に注力しています。既存産業の構造改革という大きなテーマに挑み続けるラクスルのビジネスモデルは、日本の経済全体にとっても重要な役割を担っていると言えるでしょう。

株価の動向と投資家の視点

ラクスルの株価は、年初来高値1,450円(2025年1月29日)、年初来安値844円(2025年4月7日)と、変動の大きい一年となっています。これは、成長企業特有の株価のボラティリティの高さを示すものと考えられます。投資家は、ラクスルが高い成長を維持できるか、そしてその成長が株価に適切に織り込まれているかを常に評価しています。

現在のPERやPBRが高い水準にあるのは、将来の収益拡大への期待が反映されているからです。そのため、ラクスルへの投資を検討する際は、短期的な株価の変動に一喜一憂するのではなく、同社のビジネスモデルが持つ長期的な成長性、各事業の進捗状況、そしてDX市場全体の動向を注視することが重要になるでしょう。

信用買残が550,800株に対し、信用売残が43,300株、信用倍率が12.72倍となっている点も、投資家の期待と需給バランスの一端を示唆しています。今後の企業発表や市場環境の変化によって、これらの指標も変動する可能性は十分にあります。

まとめ

ラクスルは、印刷、広告、物流という日本の基幹産業において、デジタル技術を駆使して非効率を解消し、新たな価値を創造している企業です。そのユニークなビジネスモデルと、各事業が持つ成長ポテンシャルは、長期的な視点で見れば非常に魅力的だと感じられます。

もちろん、成長企業ゆえの株価の変動リスクや、競争環境の変化といった課題もあります。しかし、既存産業のDXという大きな潮流の中で、ラクスルがどのような進化を遂げていくのか、今後も注目していきたい銘柄の一つです。

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